5月29日
5月29日(日)、3年ぶりに開催されることになった村の渓流釣り祭に参加しました! しかも前夜にお家の方たちが来られ、約一か月ぶりの再開に、学園生たちは嬉しくてたまらない様子。5時に起床し、動植物の世話など 朝の仕事をして、釣りに行く準備ができた学園生たちは、センターを出発。長靴を履いた足で3㎞強の道を一路 村内児童生徒用の釣り場となる池がある河川公園へ。長靴では早く歩けないからと、リュックサックに長靴を入れ、靴を履いて駆け出して行った子たちも! 早く辿り着かなければ釣り始めが遅れてしまうので、学園生同士で足早に向かったり、親子水入らずで話しながら早歩きしたり。
男子4人は、釣り祭の開始を告げる号砲が鳴る頃、河川公園に到着。逸る気持ちを抑え、まずは広場で釣りの準備。カーボンの延べ竿の竿先リリアンに、過日 何とか自分で作った仕掛けをつけます。少し遅れて後続の女子たちも順々に辿り着き、準備を始めました。しかし、仕掛けのつけ方を忘れてしまったのかわからないままだったのか、指導員任せにする子が…! また、早速ダブルエイトノットで作った輪が解けてしまい、結び直そうと長時間格闘することになった子も。なんとか準備ができた子から、他人に迷惑をかけないよう釣り場での注意事項を再確認し、竿と餌のブドウ虫とバケツやびくを持って、家族と一緒に池の周囲へ。釣り始めが遅くなると、釣果に影響が出るので急ぎます。
一投目 すぐに当たりがあり、大きなニジマスを釣り上げたのは釣り愛好家のJさん。さすが!! いかに早く釣り始めるか、どこで釣るとよいか、ウキ下の決め方などをよく知っています。
3分後、Kさんの仕掛けにも大きなニジマスが! しかし、釣ったニジマスをしっかりと掴んでいたのはKさんではなく、軍手をはめたお母さんの手。
学園生全員が池の周りに揃った頃には、釣り祭開始から20~30分が経っており、釣り堀の池に放流されたニジマスを面白い様に釣り上げていた学校のお友だちが既にいました。その近くで釣れば釣れそうだけれど、おまつりすると大変だし、密を避けなければいけないので、とりあえず空いている所に陣取った子たちも。そして、家族と積もる話をしながら、釣りを楽しみました。
そうこうするうちに、他の子たちの仕掛けにも、ぼちぼちニジマスがかかり始めました。あからさまな幼虫フォルムである餌のブドウ虫の 見た目がネックになり、針につけることを怖がっていたTさんは、少し嫌そうにではありましたが釣ったニジマスを素手で掴み、記念写真に納まりました!
釣り堀にはお腹を空かせたニジマス70㎏が放たれており、例年 入れ食い状態なのですが、今年は少し様子が違いました…。肌寒いほど気温が低かったので、水温もニジマスが一番餌を食べる適温ではなかったのかもしれません。
お家の人に助けてもらいながら、糸を垂らし、ブドウ虫にニジマスが食いつくのをじっと待っていると、矢継ぎ早に釣れ…。
学園生たちには、実はこの釣りでノルマが課せられていたのでした。お昼に行う昼食交流会で、釣ったニジマスの塩焼きを一人一匹ずつ食べる計画になっていたからです。参加予定人数プラスアルファを考え、9人全員が最低でも5匹を釣り上げてほしいところ。トータルで釣れた数が少なければ、一匹を何人かで分け合うような事態になってしまいます…。
初めに陣取った場所ではなかなか当たりがなかったので、たくさん釣れている辺りに場所を変えたところ、立て続けに釣れだし、釣果を伸ばした子も!! 同様に、息つく暇もなく釣れている人たちがいる所に割って入り、竿を振ったところ、案の定 おまつりし、絡まった仕掛けを解くのに時間を費やすはめになった子も。
7時25分、ようやく嬉しい一匹目を釣り上げ、白い歯を見せた子も! 釣り堀に陽がさし、少し気温も上がってくると、ウキ下を調整し、魚群が移動する場所に糸を垂らしさえすれば、続けざまに釣れる状態に。
適当な頃合いを見て、各自 朝食のおにぎりを摂ることになっていたのですが、調子よく釣れなくなり、朝食を食べ、気持ちを新たに再開する子たちもいれば、食べる間も惜しんで釣ったり、学園生が朝食を摂っている間に家族が竿を持って釣り上げたり。ニジマスではなく自分や家族の衣服を釣ってしまったり、木に糸をひっかけたりしては、お家の人や大人に外してもらい、魚が泳いでいる所に上手に仕掛けを落とせなかったり、アタリがあった時にアワセができなかったり、竿をあげるタイミングが遅く、魚が針を飲み込んでしまっていたりした時には、大人たちに手引きしてもらった学園生たち。釣り開始から2時間ほど経った頃には、全体のノルマを達成している感じになり、安堵の空気が流れました。日が昇って変化した池に落ちる影に合わせて釣り場を変え、時間いっぱい粘ったり、仕掛けのハリスから先を何度か切られたもののどうにか自分で直し、さらに釣果を伸ばしたりする子たちもいれば、早めに竿じまいをして他の子のフォローにまわった子もいました!! 9時頃、撤収の声がかかり、全員 納竿。それぞれのバケツやびくから、氷が入った発泡スチロールの箱に、釣った魚を数えながら移していきました! なんとNさんは家族と一緒に、32匹というダントツの釣果!! その中に、35㎝はあろうかという肉厚のニジマスも!! 全員ボウズは免れ、釣り愛好家のJさんによると、ヤマメやイワナ・イワメも少し釣れていたようです。全体での釣果はおよそ120匹と判明し、車へ運びました。学園生たちも車に乗って帰園。
センターに戻ったら、一息つく間もなく外倉庫前に集まり、センター長に、ニジマスのさばき方を教わりました。魚のさばき方はいろいろありますが、今回はこの後、串に刺して炭火で塩焼きにするので、まず40匹ほど はらわたを出す下処理をすることに。肛門から下あごまで包丁を入れ、内臓をかきだし、血合いをきれいに取ります。「ヌルヌルする!」とか「気持ち悪い。」などと初めは騒いでいた子もいましたが、次第に皆、真剣に。
下処理したニジマスは、水できれいに洗います。洗っていると、雑に処理してしまったことが発覚し、指で血合いや内臓を取り除くなどしていた子も。
まな板の上に魚をどのように置くと処理しやすいかを考えず、包丁の刃を入れようとする子たちもいました。数匹のはらわた出しは、あっという間に終了。さっきまで生きていた魚を、食べるために自分でさばくという体験を通し、普段食べている魚が自分たちの口に入るまでの過程を知り、命をいただいているということを今一度考えたはず。
次に、魚に竹串を打つ作業と、約80匹のこの日食べない魚の下処理を、男女で交代して行い、どちらも体験することに。男子4名は先に、背開きというさばき方を習い、実践。説明をちゃんと聞いておらず、背を開くのに、まな板の上に魚をどのように置けばよいのかわからない子たちが続出…。右手で包丁を持つ子たちは、ニジマスの頭を左に 背を手前に置き、尾びれの前辺りから包丁の刃先を入れ、背骨に当たるようにしながら骨に沿って頭の後ろ辺りまで進めて、皮と身を切ります。そして、頭を切り落とし、開いて はらわたを手で取り除きます。できたら、水で手早く洗いました。腹の皮が切れないように包丁の刃先で確認しながら腹の身を切ることや、きれいに開くことが難しかったようです。
並行して、倉庫の中では女子5名が食育指導員から、ニジマスをうねらせながら、しっかり安定させるような串の打ち方を教わり中でした。表面に串が出ていると焦げるので、中を通さなければなりません。焼いている途中に串から抜けて落ちないよう、また、姿よく塩焼きにしたいのですが、結構難しく、「わからない。」「できないよ~。」と言いながら、説明を何度も聞き、お家の人と一緒に試みていた子たちも。
しばらくして交代し、男子も串打ちに苦戦。初めは全く理解していないのに高を括って串を打ち、泳いでいる姿を模して魚体を曲げて打てず直線的にしたり、側面から串を出してしまったり。失敗して何回も串を打ち直し、身がぼろぼろになってしまったニジマスも…。
女子は、魚の背骨の手応えが包丁の先から伝わってくる感じが気に入ったのか、「背開きにする方が好きかも!」と言いながら、何匹も背開きにしていました。「背開きの方が、身や内臓を観察できて楽しい!」と言っていた子も。
串打ちに苦労していた男子も、何匹か打つうちに手順を理解し、慣れてきて上手に打てるように。皆で、なんとか40匹に竹串を打ち終えました!
それから、この日食べない80匹ほどのニジマスを保存するためさばいていた倉庫の外のテント下へ、男子も合流。まだ残っていた魚をお家の人たちと一緒に、はらわたを出す下処理か背開きに。背開きがお気に召した子たちが多く、背開きにされたニジマスがどんどん増えていきました。どちらにしてもはらわたをきれいに取り除くことが難しかったようで、「きれいに取れない!」「どこを切ればいいの?」と手こずっていた子もいれば、魚の胃袋の中に硬いものが入っていることに気づき、石を食べたことを確認したり、他に何を食べたのかということに興味を持ったりする子もいました!
そうこうするうちに11時に。昼食交流会に参加する学園生・学園生の家族・受け入れ農家さん・学園職員 総勢38名がセンターに集まり、皆で昼食を作って一緒に食べるために、早速 役割分担をし昼食準備開始。食べ物を素手で触るので、全員きれいに手を洗い、消毒することから。外では既に、農家の父さんたちや学園生のお父さん方 男衆が炭を熾していたので、食堂では、受け入れ農家の母さん4名に先生になっていただき、3班にわかれ、この辺りの郷土料理のひとつである“五平もち”作りスタート。 学園生と、学園生のお母さんや兄弟姉妹たちは、農家の母さんのご指導の下、まず、炊きたてのうるち米をすりこぎで半殺しに! 何とも物騒な話ですが、炊いたご飯を半分つく(潰す)行為を言い、もともとご飯でありながらお餅のような状態にする時に半殺しにするのです。一班あたり一升の割り当てがあり、潰すのはかなり大変! すりこぎの使い方を教えてもらって上手に潰したり、ボールが動かないようにしっかり押さえたり。半殺しという行為とは裏腹に、和やかな雰囲気の中、進んでいきました。
農家の母さんから、名前の由来やどんな時に作って食べるのか・形など、五平もちにまつわる話を聞いたり、五平もち談議に花を咲かせたりしながらも、もちもち食感を作り出すため すりこぎを持つ手を止めません。粘りが出てくると、だんだんすりこぎにご飯が張り付いてきて大変そうでしたが、すりこぎをひねりながらつく方法を教わっていました!
次に、各班に13本ないし14本の串が配られたので、半殺しにしたご飯を等分し、同じくらいの大きさになるよう丸めました。だいたい0.7~0.8合分のご飯を一つにまとめる感じ。農家の母さんたちの目分量の的確さに、驚く学園生たち!
そして、握ったご飯を平たい串にくっつけ、わらじ型に整えます。先生たちの鮮やかな手さばきに惚れ惚れしながら、皆、見様見真似で一生懸命手を動かしていました。机の上に、ぼろぼろとご飯をこぼしたり、わらじ型には見えないものを作ったり、焼いたら串からはがれ落ちてしまいそうなくっつき具合のものもあったり…。焼く時のことを考えて、串の端から数㎝あけてご飯をくっつけるという指示や、分厚すぎると食感があまり良くないという助言をいただき、真剣に握りつけていました! 手直しが必要なものをさりげなく修正してくださる農家の母さんの姿も。 外では、男衆が熾きた炭でニジマス40匹をあらかた焼き終えていました。ふり塩の加減も、焼き目も良い具合の串刺しのニジマスが、次々に食堂へ運ばれてきて…。
五平もち作りの方も終盤にさしかかりました。できたものを窓から外に渡し、あとは炭火で、表面が乾くまで焼いてもらうことに。
厨房では、農家の母さんがフライパンで“えごま”を炒って、五平もちにつける“たれ”作りに着手していました。今回は、村人に人気の“くるみだれ”と“えごまだれ”を、農家の母さんたちに伝授してもらいながら作ることに。えごまを炒り、パチパチと音がして三粒爆ぜたら、すり鉢へ。すり鉢に入れてすり潰し、砂糖・しょうゆ・冷めたお茶・塩などを加え、味を見ながらすりました。
並行して、くるみだれ作りも。むきくるみをすり鉢に入れ、塩を少々加えてすりこぎですり潰すのは、小骨が折れたよう。すりこぎの正しい使い方も、母さんたちが手取り足取り教えてくださいました! くるみの形がなくなり、ねっとりしてきたら、冷ました緑茶を加えます。すると、あら不思議! 真っ白に変化。学園生たちもお家の人たちも驚いていました! 砂糖やしょうゆなどの調味料を加えて混ぜ、味見をしながら味を調えました。熟練した母さんたちのおかげで、どちらのたれもほぼ同じ要領で、ぱぱっとできあがり!
外では、暑い中、ニジマスに続き、五平もちの両面を表面が乾く程度まで下焼き。農家の父さんが学園生のお父さんに、焼き方や焼き加減を熱く伝授しておられました!
そして、表面が乾くくらいに焼けた五平もちの両面に、くるみだれまたはえごまだれをたっぷり塗ります。塗り方について農家の父さんからアドバイスをもらいながら作業を担当した二人は、手についたり台にこぼしたりしたたれを味見と称して、何度も何度も口に運んでいました!
それから、五平もちを焼き台に運び、表面がふつふつとし、少し焦げ目がつくくらいまで炙りました。
その間、学園生たちは厨房で洗い物をしたり、食堂に机を並べて、外から運ばれてきた魚や五平もちを配膳したり。
12時半、炙られたたれの芳ばしい匂いが漂う食堂。皆で協力して作ったお昼ごはん(五平もち・ニジマスの塩焼き・豚汁)が完成し、食卓に並びました。受け入れ農家さんごとに卓を囲み、ゆっくりと会食。学園生たちの農家生活の様子を話し合うなど、和やかな時間が流れていきました。
もちろんどれもおいしく、残さずきれいに食べた学園生たち。楽しい時はあっという間に過ぎ、13時半頃お開きに。農家さんをお見送りして、片づけをし、お家の人たちもお見送りしました。
22/06/01