1月9日
小正月が近づいてきたので、1月9日(月)にその準備活動をすることに。売木村では1月14日から16日までを小正月またはモチイと言います。モチイというのは旧暦でいうモチの日のことで、月の十五日・満月の日のこと。欠けたところのない満月のように、豊年満作の年になるように、その年の最初の満月の日(モチの日)に豊作を祈るところから、百姓の正月とも言われるようになったと言われています。学園生たちはまず、売木の伝統文化を記録してあるDVDを見て、小正月の準備や御飾り・オタッシャギ・イナホとモチバナ・繭玉・モチイの年取りなどについて学びました。そして、13日までの都合の良い日に作るという小正月の御飾り「ハザ」を、自分たちの手で作ってみることに。
ハザとはどんなものなのか、DVDで見てイメージできたので、正午すぎに外に出て活動開始。まず、12月18日に立てた門松の周りに集まり、1月5日にしておくはずだった松納め(松こかし)から。ハングリ様に縛りつけていた松や、門松に飾っていた注連縄やおやすも一旦外しました。それから、小正月を数日後に控えているので、近所の村長さん宅の玄関先には既に実物があるのでは?と、皆で偵察に…。予想通りありました! DVDで見たハザとは少し違うバリエーションでしたが、学園生たちはこれから自分たちが作ろうとしているものを理解した様。
昼食を挟み午後2時15分から、松納めで一度倒した松は、のこぎりで枝を少し切り落としたり、元の方を少し切りつめたりすることに。これには、一度使った松を新しくするという意味があるそうで、対になるよう 二本の松に手を入れました。のこぎりを上手く使えるようになったことを喜ぶ子たちも!
それから、切り直して新しくした二本の松を同じくらいの高さになるよう調整しながら、ハングリ様に藁縄で一本ずつ取りつけました。注連縄やおやすも、小正月に使うよう まとめてハングリ様にくくりつけました。
次はハザに使うオニギを作るため、松・雑木など割れの良い木をみかん割りにする作業。売木ではフシノキ(ヌルデ)を使うことが多いそう。しかし、自分たちで適当なフシノキを見つけて伐り出すことは難しいので、炭焼き用の薪にと準備していた玉切りにしたヒノキを使うことに。ヒノキは、炭焼き窯の焚き口に入るくらいの長さに切ってあったものなので、適当なオニギの長さの半分ほどで随分短かったけれど、自立させることができる太さだったので、鉞(まさかり)で薪割りをするようなやり方で、みかん割りに挑戦することにしました。安全で基本的な薪割り方法のコツを聞いた後、鉞での薪割り経験がある継続生が先陣を切りました! 一撃ではなかったけれど、何度か鉞を振り下ろすうちに、真っ二つにしたり、さらに二等分に割ったりすることに成功!
続いて一年目の子たちもトライしてみることに。柄が長く刃がとても重い鉞を手にして初めて、自重を利用して振り下ろして使用する道具だということがわかり、見るのとやるのは大違いだということを実感していました。丸太の小さい断面に鉞の刃を打ち下ろし、一撃で割ることが非常に難しい場合、大きい断面のものに変えてみても、節がたくさんあって割れなかったり、柄の部分で丸太を叩いてしまったり。重さを上手に使って真っ直ぐ振り下ろせず、的から外れ、鉞の刃が土に当たったり、ヒノキが少し欠けたり飛んでいってしまったりするだけになってしまった子も…。次第に距離や重さの感覚を掴み、スパッときれいに真っ二つに割れた時は、とても気持ちが良く、もっと割りたいと言っていた子もいました。
変な衝撃音とともに手はビリビリし、鉞の入る角度が真っ直ぐではないことに気づいて角度を調整し再チャレンジしたり、鉞を振り下ろす際に腰を落とすことを意識したりしながら、一つの丸太に何度も鉞を振り下ろし、ようやく「スパーンッ!」ときれいに割れた瞬間に残った手の感触はとても軽いものだということを体験できた子も! もちろん非常に気持ちが良かった様。直径が十数㎝ほどのヒノキは四分割や六分割に、もっと太いものは八分割にすることに。
しかし、節があってもどうにか割ったり、半分に割って小さくなったりした丸太の断面目がけて鉞を振り下ろし、さらに半分や三等分に割るのは至難の業…。そこで、鉞で上手くみかん割りにできなかったヒノキは手斧や鉈を使って割ることにしました。手斧は鉞と同じように使い、鉈は、さらに細く割りたいヒノキの断面に刃を、二等分するように当て、背を木材やハンマーで地道に叩いていくやり方を採用。節があってもわりときれいに割れたので、ほとんどのヒノキはそのように割っていくこととなりました。手斧や鉈の刃がヒノキに挟まってしまい、にっちもさっちもいかなくなることもありましたが、鉈の刃先をヒノキの断面に当てて持つ役割と、背を木材で叩く役割をそれぞれが果たすなど協力して作業を進めていた子どもたち。パッカーン!ときれいに割れた時の快感をもう一度味わいたいと、もう少し鉞でのオニギ作りに励んだ子も。皆で協力して堅実に割っていく作業を続けた結果、たくさんのオニギを作ることができました。
それから、ハングリ様に架け渡した ハザ棒に見立てた棒に、ヒノキで作ったオニギを立てかけていくことに。豊作を祈ってハングリ様の周りに中が見えないくらいに立てかけるのですが、表面に、きれいに割れたヒノキの断面を外側に向けて寄りかからせました。そして、ハザに載せたり掛けたりして飾る 俵に見立てたものを準備。正式にはフシノキを使うのですが、その辺に生えていた細い木を伐ってきて代用。20㎝ほどに切ったものや、それを藁縄の両端にくくったものを、ハザの上に飾ったり掛けたりしました。
今年も豊年満作でありますようにとの願いを込めながら、皆で力を合わせ、小正月の御飾りのハザを完成させることができました! 昔は農薬も肥料もなく、技術も低く、ほとんど自然状態に近い栽培だったので、農作物の出来不出来はその年の気象条件に大きく左右されたそう。それだけに、神仏や自然に祈る気持ちには切実なものがあり、そうした気持ちを形にして、どうかこのように豊作にしてくださいと祈ったのが、小正月の飾りものだということを知った学園生たち。オニギの長さが随分短く、DVDや村長さん作のものとは違うバリエーションのハザになってしまいましたが、14日の朝、オニギに「十二月」と書き入れる予定です。
23/01/14